みなさま、静岡市美術館で開催中の「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」は見に行かれましたか。

2020年9月19日から愛知県美術館から順番に開催されており、今回の展示では、最新のCTスキャンにより、人間と動物のミイラの様子が紹介されています。ミイラの布をほどいて解剖しなくても、中身が分かるようになりました。また、ミイラの棺が立った状態で展示されており、近くでじっくり観察することができます。

今回は、エジプト展にミイラを見に行ったとき、かわいさに驚いた、「エジプトマングースのブロンズ像」についてご紹介します。
(画像はコビトマングースです。)

エジプトマングースのブロンズ像「イクニューモン」にひとめぼれ!

エジプトマングースのことを「イクニューモン」とよびます。前足と後ろ足が短く、尾の根本が太くて先にいくにつれ細くなっているのが特徴です。ヘビやネズミを退治することから、古代エジプトでは、聖獣ともされていました。

ここから、ひとめぼれした「エジプトマングースのブロンズ像」についてお伝えしていきます。

今から2300~2700年ほど前に、古代エジプトの職人によって作られました。大きさは26センチほどで、2本の足で立ち上がっています。2本の前足は、お盆を持つように上に上がっています。(実際の手のひらは下向きですが。)毛並みも表現されており、本物のマングースが立ちあがっているようにみえます。動物園でミーアキャットが2本足で立ち上がっているようすをイメージしてみてください。

実際の展示では、いくつかの銅像と同じようにさりげなく展示してあり、自然に立ち上がったマングースに遭遇した気分が味わえました。立ち上がっているだけでもかわいかったですが、前足がちょこんと上がっていてキュンときました

なぜ立ち上がっているのか、気になったので調べてみました。美術館の方に聞いてみたところ、太陽神への礼拝ポーズと考えられるものの、厳密には分かっていないそうです。

エジプトマングースのイクニューモンの像は前足と後ろ足が地についた状態でもみつかっています。あえて立ち上がった像を作成したことに意味がありそうです。

残念ながら、今回の展示では見ることはできませんが、立ち上がったカワウソのブロンズ像も発見されています。名前は「カワウソ像」(ニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵)といいます。太陽に向かって立ち上がっているようすを、太陽神を崇拝していると古代エジプトの人々は考えたといわれています。

メトロポリタン美術館のホームページに載っていたカワウソ像の写真も、イクニューモン像に負けずかわいかったです。実物をみたら、かわいさに癒されそうです。

カワウソ像

(カワウソ像のイメージです。)

古代エジプトでは、マングースが信仰されていた

さて、マングースと聞くとどのようなイメージがありますか?小さいけど、ハブを倒す強い動物のイメージでしょうか。(実際には、沖縄ではハブを倒してはいないそうです。代わりにヤンバルクイナやアマミノクロウサギといった希少種を食べており、問題になっています。)

ここで少し豆知識を紹介しましょう。実は古代エジプトの人々は、マングースがヘビやネズミをやっつけてくれるので、感謝し尊敬していました。鳥の巣の卵やヒナを狙う特徴を生かし、狩猟のパートナーでもありました。

古代エジプトではマングースの敵のヘビも信仰されていた!

マングースは、ヘビを退治するので崇められていました。しかし、古代エジプトではヘビも崇められていたのです。理由はネズミを捕えるので、農作物の守護者として感謝されていたから。

また、コブラを筆頭に毒をもったヘビもいたので、その恐ろしさも崇拝される原因の一つになっていました。

最近では、ヘビのミイラがCTスキャンされて、コブラだったかもしれないということが明らかになりました。科学の進歩によって、これからも新発見があるかもしれません。

敵対する動物どうしが崇められていたというのは、なんだか不思議な感じがしますね。現代ではきのこの山派とたけのこの里派があるように、マングース信仰派とヘビ信仰派がいたのかもと考えると、面白いですね。

古代エジプトの文化を知る!たくさんの動物が信仰されていた事実

古代エジプトでは、たくさんの動物が信仰されていました。

ネコやイヌ、タカ、ワニ、トキなどがいます。これらの動物は、エジプト神の姿や体の一部に描かれています。例えば、アヌビス神は、イヌの頭部をもつ神さまとして描かれています。

ネコはマングースと同様にネズミを退治したので、「バステト神」として崇められていました。

古代エジプトでも、ネズミは穀物を食べてしまうので、厄介者だったようです。

また、マングースの天敵のヘビと同様に、ワニも信仰されていました。ワニやワニの頭をもつ神を「セベク神」といいます。ファイユームという都市では、セベク神を拝めていたので、天敵であるマングースは崇められていませんでした。マングースはワニやヘビの卵を食べ、眠っているワニをやっつける物語もあります。

古代エジプトは自然や動物を身近に感じていた文化といえます。地域ごとに守護神が異なる点もおもしろいですね。また、エジプトマングースのイクニューモンのブロンズ像がまるで本物のように丁寧に作られていることからも、動物を尊敬し、崇めていたと考えられます。

エジプトマングース「イクニューモン」を見に美術館へGO!

今回は、古代エジプトの信仰されていた動物のなかから、エジプトマングースのイクニューモンを紹介させていただきました。実物を見たくなった方もいるのではないでしょうか。

ちなみに、愛知県美術館の特設のミュージアムショップでは、イクニューモンのしおりとポストカードが売られていました。その姿が気に入ったら、記念に購入するのもいいでしょう。

また、グッズを買わなくても、古代エジプト展のパンフレットにイクニューモンが載っていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

(「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」2020年12月19日からは静岡市美術館にて開催中です。)